
鈴木茶苑鈴木健二
「家を継ぐ」ことを、決めたとき。
興味がなかった「仕事以外の」お茶
お茶の世界に入ったのは19歳の時。
しかし大きな茶工場へ勤め、お茶作りを任されるようになった時
求められているものと、自分が作りたいお茶のギャップを感じるようになりました。
求められているものを規格通りに作る。
大量に運ばれる茶の生葉を効率よく機械で回していく。
お茶を作っているというよりは、いかに工場を回していくかのルーティンになった時
「これは仕事だから、仕方のないことだ。」と思いました。
お茶は情熱をかけるものではなくなっていました。

お茶との向き合い方が変わったのは、烏龍茶づくりの講習を受けた時。
煎茶と烏龍茶、製法の違いはあれど
どちらも「葉をいかに均一に水分を抜いて乾かすか。」が最終的なゴール。
そのために、過程が違うだけなんだと。
それが分かった時、お茶作りって面白い!という感動・感覚が蘇りました。
それから趣味として初代である父の発酵茶作り (紅茶、釜炒り茶等) を手伝うようになり
改めて自分がどんなお茶を作りたいのか考えました。
そしてやっぱり、葉っぱの1枚1枚に向き合えるようなお茶を作りたいと思いました。
ルーティンでなく、機械と向き合うだけでもなく。
それまで僕は、これからの農業は個人農家では成り立って行かないと思っていました。
1農家でできることは限りがあるし、資金面でも現実的に大変だからです。
しかし、自分の作りたいお茶が見えて、そちらを選びたいと思った。
妻の後押しと支えもあり、父の鈴木茶苑を継ぐ決心をしました。

今は若い人の方が、お茶に可能性を感じてくれている気がします。
もっと言うとお茶に限らず、何か信念を持って、実際にアクションを起こしている人が多いなって。
それはすごく嬉しいですね。
そういう人たちを、できるだけサポートできたらな。と思っています。

お茶業界は今大変な時にある、と言われてます。
だけど今までの歴史を振り返ってみると、
例えば政情不安の時、明治維新変革期など、偉人と言われる人がいますよね。
その人たちって平和な時なら、それなりに一門の人物だっただろうけど
歴史に名を残すことはなかったんじゃないかなって思うんです。
そう考えると、お茶業界が大変な今だからこそ頭角を現す人が出てくるし
お茶に対する新しい時代が生まれる気運がある時じゃないかと思います。
そう思うと僕はお茶に悲観してなくて、むしろ面白いと思ってる。

僕がやりたいお茶はなんだろうと考えましたが
1番はお茶を生活から遠ざけたくないな。と。
難しく向き合うお茶は望んでいなくて、
例えばお湯は何度まで冷まさなきゃ、とか、
茶葉の重さはこれだけ、ときっちり測るとか。
否定はしないけど、僕はもっと、日常のお茶を作りたいと思っています。
そして、これからの人たちに、自分や妻の姿を見て育った娘に
お茶を「やってみたい」と思わせる事ができればいいなあと思っています。